【コラム】社員の魂に灯をともす!
なぜ、オリンピックで感動するのか?そして、人の行動を変えられるのか?
「人間は真善美にあこがれずにはいられない存在ですが、それは、心のまん中にその真善美そのものを備えた、すばらしい真我があるからにほかなりません。あらかじめ心の中に備えられているものであるから、私たちはそれを求めてやまないのです。」
『生き方』(稲盛和夫 サンマーク出版) p234
※『真善美』(しんぜんび)とは、人間の最高の価値としての、真と善と美。
※『真我』とは、古代インド発祥の宗教から派生した言葉。真我は本当の感謝をすることで引き出される「本当の自分」のこと。潜在意識のさらに奥に入っていき、まっさらな心になったとき、両親や先祖への感謝の念が湧き上がり、それが自分のまわりに広がると、自然と闘う相手がいなくなります。
2021年に開催された東京2020オリンピック。
興味のない方は、見ていないでしょうね。
私はスポーツ観戦が大好きなので、連日、感動の涙を流してテレビを見ています。(笑)
あの試合を見ましたか?
今大会で初採用された卓球の混合ダブルス決勝で、中国ペアを破り、金メダルを獲得した
伊藤美誠選手と水谷隼選手。
彼らがドイツのペアと対戦した準々決勝です。
最終ゲーム、序盤から完全に主導権を握られ、一時は2対9。
そして、相手のマッチポイントを計7度もしのいで、最後は逆転で勝利したのです。
優勝した決勝では涙が出ませんでしたが、準々決勝では夫婦で涙をこぼしていました。
男子柔道73キロ級で金メダルを獲得した大野将平選手の言葉。
「賛否両論あることは理解している。
われわれアスリートの姿をみて、何か心が動く瞬間があれば光栄に思う」
アスリートたちが参加する目的の一つは、自分の為かもしれません。
でも、誰かに勇気を提供する為に参加している選手が大半ではないでしょうか?
そんな感動の瞬間が、私たちの『真我』に触れ、生きる力を与えてくれています。
この世界にあふれる『真善美』と、
心の中核にある『真善美』に満ちた『真我』は響きあう仕組みになっているようです。
オリンピックの感動体験のように、私たち人間は『真善美』に触れると、胸をうたれ感動します。
そして、感動的な体験が人の心に刻まれて、その人の価値観や生き方を変えてしまうことがあります。
私たちはオリンピックで活躍する選手から感動を得て、そこから大切な学びを得て、
本当の感謝をすることで『真我』という「本当の自分」に触れているようです。
ところが、日常の生活を振り返ってみると、どうなのでしょう。
『真善美』がキレイごとに過ぎない感じがします。
「人は本当に、『真善美』を求めているのだろうか?」と、疑問が湧いてきます。
私たちの生きる社会は不条理で、「怒り」「悲しみ」「怖れ」「憎しみ」「嫉妬」など、
人間の醜い感情に触れることのほうがよくあることです。
この厳しい世の中、正直なところ、
「『真善美』なんて甘っちょろいこと、言ってなんていられない!」というのが、
多くの人の本音ではないでしょうか。
それでも『真善美』に触れる感動体験が、何ものにも代えがたい「人生の財産」になるのも真実です。
その財産は、辛い状況になればなるほど、「生きる意味」となって人の生に力を与えるのです。
JALを再生した稲盛さん!
破綻当初の日本航空は、倒産したことに対する危機感や当事者意識が欠けており、社員の一体感もなく、再建は、不可能とさえいわれていました。そのような中で、稲盛が日本航空へ携えて行ったのが、「フィロソフィ」と「アメーバ経営」でした。
「JALフィロソフィ」が策定されたことにより、日本航空に共通の価値観が生まれるとともに、全社員の意識改革が進みました。
またアメーバ経営の導入により、社員一人ひとりに経営者意識が芽生え、いかに自部門の売上を伸ばし、経費を削減できるかを全社員が主体的に考えるようになったのです。
その結果、それまで赤字続きだった日本航空は、翌期には営業利益1,884億円をあげる、世界の航空業界の中で最も高収益の会社に生まれ変わりました。
そして、2012年9月には、日本航空はわずか2年8カ月という短期間で再上場を果たしたのです。
稲盛和夫オフィシャルサイトより
https://www.kyocera.co.jp/inamori/profile/episode/episode10.html
フィロソフィ(philosophy)とは、実践を通して得た人生哲学であり、
その基本は「人間としてこういう生きざまが正しいと思う」ということです。
仕事を通してフィロソフィを実践し、まわりに感謝することによって、私たち人間は、
『真我』という「本当の自分」に触れられるのです。
それは、仕事を通して顧客に貢献するプロセスです。
私たちは仕事を通して、社員に『真我』の体験を提供できるのです。
それこそが社員の心に魂という灯をともして、共に仕事をしていくエネルギーの源泉になるのです。
マーケティングの基本です。人を動かすUSP
(ユニーク・セリング・プロポジション:Unique Selling Proposition)
世界最初のUSPは、アメリカ陸軍兵士の
「口の中で溶けて、手に溶けないチョコレートを開発してほしい」という要望から開発された、
アメリカのM&M’s(エムアンドエムズ)のチョコレートのキャッチコピーでした。
「お口でとろけて、手にとけない」
(‘Melts in your mouth, not in your hand’)
砂糖でチョコレートがコーティングされているため、夏場でもチョコレートが溶けず、
手を汚さずに食べられるのが特徴でした。
そしてそのコピーは母親たちの共感を得て、その子どもたちから熱い支持を受けるようになりました。
ビジネスや商品・サービスの提供において、
『特徴』『強み』『顧客の利益』を端的に表現したのがUSPです。
もちろんそれは、ライバルが提案できない特徴があり、自社の強みが活かせること、
顧客のメリットがあることが条件です。
そして、短いキャッチコピーに工夫したUSPが人を動かすのです。
◆M&M’s(エムアンドエムズ)のチョコレートの事例
ユニーク→『特徴』: 暑い日も手が汚れない
セリング→『強み』:チョコは口の中で溶ける
プロポジション→『顧客の利益』:手をキレイにする行為が不要になる
それぞれ重なる部分がありますが、優れたUSPには『特徴』『強み』『顧客の利益』があるのです。
◆ASKULの事例
USP:「明日来るASKUL! オフィスに必要なモノやサービスをスピーディに「明日」お届けします」
ユニーク→『特徴』:届けてもらえる
セリング→『強み』:明日に届く
プロポジション→『顧客の利益』:事務員さんの時間が節約できる
『顧客の利益』に関しては、利便性、即時性、付加価値の表現を工夫することがポイントですね。
ぜひ、参考にしてください。
著者:椎名 規夫(しいな のりお) 住宅・リフォーム販促情報局 代表 株式会社エムディー 代表取締役社長 経歴:社団法人取手青年会議所 1999年理事長講演実績:日本郵便(株)、三井住友海上保険会社、中部電力、日本M&Aセンター、(株)船井総合研究所、(株)三洋堂書店、日本創造研究所、(独)教職員支援機構、中央労働災害防止協会:大阪安全衛生教育センター、(財)日本品質保証機構、(福)名古屋市社会福祉協議会、東京都教育委員会指定道徳授業地区公開講座、川口市労使講座、長野商工会青年部、静岡県清水建設業協会青年部、千葉県宅地建物取引業協会松戸支部研修、(社)常総青年会議所コミュニケーション研修など、多数。 ・全国6万社が加盟する中央労働災害防止協会でコミュニケーション研修担当 ・独立行政法人教職員支援機構で全国の小・中、高等学校の教員向けコーチング研修担当 ・労働基準監督官(国家公務員)合同研修でメンタルトレーニング・コミュニケーション技術担当 |